鳥取砂丘フィールドハウス オアシス館

[概要]
所在地 :鳥取市
用途  :休憩所・展示施設
構造  :木造 平屋建て
建築面積:126.00㎡
延床面積:126.00㎡(約38.2坪)

 建築後約35年が経過した砂丘休憩舎を、砂丘西側の観光拠点施設として再活用するリノベーション計画です。鳥取砂丘フィールドハウスはオアシス館+風紋館の2棟で一体の施設として構成されます。当社はオアシス館の設計を担当しました。

[主要仕上]
屋根  :カラーガルバリウム鋼板横葺き
外壁  :杉板ドイツ下見板張り・珪藻土塗り
内部床 :ビニル床タイル
内部壁 :桧縁甲板張り・珪藻土系塗り材
天井  :梁表し・野地板表し

[外部]
 オアシス館と風紋館が調和して一体のフィールドハウスとなることを目指し、外装仕上げには自然素材を活用しました。回廊にかかる庇を境に仕上材料を切り替え、上下でメリハリのついた2トーンの外壁を構成しています。また、旧休憩舎からあった回廊は動線をそのまま活かしつつ幅員を広げ、オアシス館から風紋館へのアプローチが容易になるよう配慮しました。

[内部]
 エントランスから室内に入ると、大きな壁面展示スペースが目に入ります。こちらでは観光客に向けて砂丘の見どころを案内しています。展示の反対側には大きな窓に面して長いカウンターテーブルを造り付け、目の前に広がる砂丘を眺めながら一休みすることができます。カウンターテーブルは地元の杉材で作られた杉三層パネル(Jパネル)を活用しています。

 また、この施設ではエントランスからトイレまで床の段差を解消してバリアフリー化しました。旧休憩舎から設けられていたトイレはレイアウトを大きく変更し、独立した多目的トイレのほかに、男女のトイレ内にも多目的ブースを設けています。多目的ブースには簡易オストメイト設備やおむつ交換台を設置し、これまでより更に多くの利用者に活用していただけます。

 

[BEFORE]

大屋根の家

昔からある集落の中での建替え計画。

[概要]
所在地 :鳥取市
用途  :住宅
構造  :木造 2階建て
建築面積:125.83㎡
延床面積:187.96㎡(約57.0坪)

 古くからある集落で親子3世代が暮らす母屋を建て替えた計画です。旧家には良く手入れされた庭があり、それを活かすために母屋が建っていた位置を大きく変えずに建物を配置しました。

[外部の特徴]
 外観を印象付ける日本瓦葺きのアシンメトリーな大屋根は背後の山の稜線に良く馴染みます。外壁は白い左官壁(塗り壁)と杉板張りのコンビネーションに対して縦格子でアクセントをつけ、古くからある集落に調和する伝統的な意匠としました。

 また、元々あった立派な庭に面して大きな濡れ縁とバルコニーを設けて庭と居室を繋ぎ、日々の生活の中にも旧家の面影を感じられるよう配慮しました。

[内部の特徴]
 親世代との同居を考慮し、
LDKや水回りに合わせて高齢者の居室を1階に配置しました。生活機能を1階に集約することで日々の生活の負担を軽減し、ゆったりと幅を確保した廊下やトイレは車椅子の使用や介助にも対応しています。LDKに隣接する和室は玄関ホールから直接アプローチ可能な配置とすることで来客の動線に配慮し、戸を開放すればLDKの延長として一続きの大空間に変化します。

 2階に配置した夫婦と子どもの居室は、落ち着きが得られる個室の形態としました。各室には押入とロフト収納を備え、大家族に対応した十分な収納力があります。

 この住まいは鳥取県産の杉を使用した柱や梁をそのまま室内に表し、漆喰や珪藻土などの自然素材と組み合わせてシンプルかつ素朴な内装としました。床は肌触りの良い杉のフローリングを全面に張り、一年を通じて素足でも快適に過ごすことができます。

アシンメトリーの大屋根に、漆喰と杉板のコンビネーション。縦格子がアクセントとなる。

大きな濡縁とバルコニーにより、旧家の庭との繋がりが生まれる。

一体感のある明るいLDK。右側は濡れ縁に、左側は和室に繋がる。

キッチンの背面収納は建具により存在感を消すことができる。

キッチンからリビング側への眺め。調理しながら家族の姿を伺う。

2階へ上る動線をLDKに取り込み、家族の気配を感じることができる。

来客対応や、一時的な宿泊に対応した和室。玄関から直接アプローチできる。

襖を開放すると、和室とLDKが繋がり、一体的な空間に変化する。

ゆったりとした玄関。玄関脇には天井まである大容量の靴収納を造り付けた。

高齢者の同居に配慮し、廊下はゆったりと幅を確保した。

高齢者室。高窓より明るい自然光が入る。

将来の車椅子の使用や介助に配慮し、トイレもゆったりと設計。

2階の主寝室。小屋裏を活用したロフト収納を備える。

寝室にもたっぷりと明るい自然光が入る。

小屋裏を表しとし、勾配天井で解放感のある個室。

格子状の窓と高窓が印象的な階段ホール。

2階のトイレ。住まい全体の仕上げには漆喰などの自然素材を使用している。

美保公園の家

環境の良い住宅地に建つコンパクトな住宅。写真左は河川が流れ、その奥には都市公園がある。

[概要]
所在地 :鳥取市
用途  :住宅
構造  :木造 2階建て
建築面積:66.24㎡
延床面積:105.98㎡(約32.1坪)

 環境の良い住宅地に建つ、コンパクトな住宅です。敷地は南北に細長い形状をしており、2方向が道路に面する角地。西側は小さな河川が隣接し、河川の奥には大きな都市公園を望むことができます。敷地面積自体は決して大きくはないものの、周囲に対して開けた立地となっています。

[外部の特徴]
 棟の位置をセンターからずらし、道路側に葺き下ろしたアシンメトリーな大屋根が特徴です。屋根の高さを抑えることで道路側への圧迫感を軽減しつつ、建築基準法による高さ制限をクリアしています。

 外壁は、白い左官壁(塗り壁)と濃色に塗装した杉板の対比により、重心を下げたシンプルな外観としました。玄関の庇とドアは、アルミの素材感が表れるシルバーカラーを合わせ、軽やかな印象を引き立てています。

[内部の特徴]
 敷地の特徴を考慮し、河川と公園のある側から光と風を取り込む計画としました。
河川に面してテラスやバルコニーを設けることで、内外を繋ぐ中間のスペースとして機能させています。その中間スペースに面して配置したリビングルームの上部には、屋根の形状を生かした吹抜けを設け、家全体の一体感を演出しています。天井高さが抑えられた吹抜けは、解放的でありながら落ち着きも併せ持ち、家族の気配を感じながらゆったりと過ごせる空間となっています。

 室内は珪藻土などの自然素材による仕上げや、鳥取県産の杉を使用した柱や梁が表されており、シンプルで素朴な表情を見せます。コンパクトな住宅ですが、吹抜けや中間領域によって空間が充実し、実際の面積以上の広がりを感じられる住まいです。

左官壁(塗り壁)と杉板の対比、道路側に葺き下ろした瓦の大屋根が外観を特徴づける。

河川に沿ってテラスやバルコニーなどの中間領域を設けている。

コンパクトな玄関ホール。リビングとの間を区切るのは、軽やかな印象の杉ヒゴ入りの建具。

天井まである大容量の下足入れを造り付け、玄関はコンパクトに設計。

河川に向かって開けたリビングルーム。キッチンや和室と繋がって一体的な空間に。

LDKの道路側はプライバシーを確保し、高所に設けた窓より明かりを取り込んでいる。

来客や家族の宿泊など、多用途に対応した和室。普段はリビングルームの延長として使用。

葺き下ろした屋根に沿って設けた吹抜け。天井の高さが抑えられ、落ち着きのある空間。

空を見ながら2階へ。

見通しの良い2階の廊下。

1階と2階が吹抜けを介して緩やかに繋がる。

2階の廊下よりLDKを見下ろす。

2階には寝室を配置。屋根を支える骨組みが室内に表れ、素朴な空間となっている。

軽やかな印象の建具。廊下・吹抜けを介して1階と繋がっていく。

屋根裏空間も活用した、大容量のウォークインクロゼット。

2階のバルコニーから河川を挟み、自然豊かな都市公園を眺めることができる。

湯川・杉の家

[概要]
所在地 :鳥取市
用途  :住宅
構造  :木造 2階建て
建築面積:77.23㎡
延床面積:121.01㎡(約36.7坪)

 古くからある城下宿場町の近傍、周囲を山と河川に囲まれた自然豊かな地域に建つ住まいです。この住まいは鳥取開発公社の『地域住宅モデル普及推進事業プロポーザル』で、最優秀提案に選ばれて建築されました。設計においては、地域で育った材料や地域の職人の技術を生かし、地域に馴染む住まいを目指しました。特定の家族に向けた住まいではないため、細かな作り込みよりも、どのような家族が暮らしても使いやすい『おおらかさ』を大切にしています。

[外部の特徴]
 外壁は漆喰塗りと杉板張りの自然素材を組み合わせ、シンプルで素朴な外観としました。日本瓦の大屋根は、道路側に向けて葺き下ろして高さを抑え、周囲への圧迫感を軽減して街に馴染ませています。

 南側に設けた日当たりの良い庭は地域との繋がりを生み、濡縁(ウッドデッキ)は庭と住まいをつなぐ中間的なスペースとして機能します。また、車椅子の使用や高齢者の暮らしも想定して積極的にバリアフリー化しました。玄関は引戸形式とし、玄関前のアプローチには階段にスロープを併設しています。

[内部の特徴]
 玄関に設けた広い土間空間は内玄関へと通じており、住まい手のユーティリティースペースとなるほか、地域住民との交流などの用途にも使用が可能です。リビングルームは住まいの中心に配置し、上部には吹抜けを設けました。リビングルームから内外や2階へと空間が展開し、どこにいても家族との繋がり、地域との繋がりを感じられます。2階に設けた部屋は明確に個室としての区切りを持たず、住まい手の必要に応じて個室にも広間にもなる、可変性の高い作りとしています。

 内装には漆喰塗りなどの自然素材に加え、鳥取県産の杉を使用した柱や梁をそのまま仕上げとして表しています。また、内部の建具も全て地元・鳥取の職人の手によって作られており、いずれも見た目はシンプルですが、時と共に味わいを増していく材料です。

 また、この地域では前面道路に温泉配管が通っており、住まい手の希望により温泉を給湯することが可能です。その特徴を生かして浴室には吹抜けとウッドデッキを設け、壁や天井はヒノキの板張りで仕上げました。気候の良い時期には、窓を開けて露天風呂を満喫することができます。

外部仕上げは、日本瓦、杉板、漆喰などの伝統的な材料を使用。

LDKから濡縁、庭を介して地域と繋がる。

LDKが住まいの中心。

LDK上部の吹抜けから、明るい自然光が入る。

吹抜けを介して、2階との繋がりが生まれる。

LDKに隣接して畳スぺースを設けている。建具で仕切れば、個室にも変化する。

畳スペースの小窓。

階段の左側は、内玄関へ繋がる。

2階の廊下は吹抜けに面し、解放感がある。

2階より吹抜けを見下ろす。

広い玄関土間。様々な使い方に対応できる。

主寝室。屋根面の杉板が室内に表れている。

主寝室の一角には書斎コーナーを設けている。

個室は広い一室を確保。使う人に応じて、仕切って使うことも可能。

ヒノキ張りのお風呂。温泉の給湯も可能。

浴室専用のウッドデッキ。露天風呂気分を味わえる。

トイレの壁面にも杉板・漆喰を採用。

土間のある家

[概要]
所在地 :鳥取市
用途  :住宅
構造  :木造 2階建て
建築面積:89.90㎡
延床面積:139.90㎡(約42.4坪)

 郊外の住宅地に建築した、若い夫婦と子どもが暮らす住まいです。若い世帯の住まいでは、家族の誕生や成長に伴って暮らしが刻々と変化していきます。敢えて作り込み過ぎず、暮らしの変化に合わせて柔軟に使い方を変えられる『おおらかさ』を持たせた設計を心がけました。

[外部の特徴]
 杉板張りと漆喰塗りのコンビネーションによる2トーンの外壁に日本瓦葺きのシンメトリーの屋根が乗る、シンプルな外観としています。日当たりの良い庭に面して濡縁(ウッドデッキ)を設けており、大開口の木製サッシを開け放すことで内外が一体的に繋がります。濡縁が内外の中間的なスペースとして機能し、開放的な暮らしを楽しんでいただけます。

[内部の特徴]
 玄関には広い土間スペースを設け、内玄関や勝手口までが一連となった『通り土間』の形態としました。
通り土間は接客・趣味の作業・収納など、多機能に使用できる利便性の高い空間となっています。

 通り土間に隣接してリビングルームを配置し、その上部は吹き抜けとしています。リビングルームを中心に1階から2階までのあらゆる居室が緩やかに接続し、どこにいても家族の気配を感じながら暮らすことができます。各部屋はそれぞれオープンで大きな空間とし、部屋としての明確な区切りを敢えて持たせないことで、家族の変化に合わせて住まい手が柔軟に使い方を変えていくことができます。

 内装には鳥取県産の杉や桧をふんだんに使用し、柱や梁はそのまま仕上げとして積極的に室内に表しています。また、2階の床や屋根は、そのまま天井の仕上げを兼ねています。建築資材を削減して階高を低く抑え、高いコストパフォーマンスを実現すると共に、住まい全体が杉の良い香りに包まれます。柔らかく暖かい杉の床は、1年を通じて素足で気持ち良く過ごしていただくことができます。

ポーチはコンクリートの小壁により道路側からの目線をカットしている。玄関ドアは木製の引戸を造作して設置した。

濡縁に面して大開口の木製引戸を設けている。

玄関は広い土間空間となっている。

格子戸がスペースを緩やかに区切る。

玄関から内玄関、収納まで一体的な土間スペースとしている。

広々としたLDK。右側は濡縁に面する大開口の木製引戸。

LDKは、南から北まで抜ける一体的なスペースとなっている。

こじんまりとした和室スペース。

和室は建具を開け放つことでLDKと一体的な利用が可能。大黒柱が存在感を放つ。

LDKの吹抜けから2階に繋がる。どこにいても家族の雰囲気を感じることができる。

キッチンは籠り感のあるスペースとした。奥の引戸から通り土間へ繋がる。

屋根が表しとなった開放的な空間。

吹抜けに面するフリースペース。建具を閉めると個室としても使用できる。

子ども室は、一つの大きなスペースとして設計。

子ども室は出入口を2か所設けている。子どもの成長に合わせて部屋を仕切ることも可能。

はまさかの家(杉の香りの家)

[概要]
所在地 :鳥取市
用途  :住宅
構造  :木造+鉄筋コンクリート造 2階建て
建築面積:132.80㎡
延床面積:227.10㎡(約68.8坪 ※面積には車庫部分も含む。)

 郊外の住宅地に建築した、2世帯・7人の大家族が暮らす二世帯住宅です。敷地は2方向が道路に接する角地で、それぞれの道路には高低差があります。低い方の道路に面してガレージを設け、ガレージの上に中2階を乗せる『スキップフロア』の形態とすることで道路の高低差を処理した計画です。

[外部の特徴]
 前面道路は約4mの幅がありますが、背丈ほどのブロック塀が連なる街区にあり、見通しが悪い環境です。そのため、近隣への圧迫感の軽減と車の出入り時の安全性を考慮し、建物を自主的に道路境界線より控えて建てました。敷地が街の一部となり、セットバックにより生じた空地は来客の駐車スペースとして活用できるほか、近隣の車のすれ違いスペースとしても機能します。ガレージの奥には、プライベート性の高い中庭を設けています。

 外装の仕上げには、日本瓦や漆喰・杉板といった伝統的な自然素材を使用し、年月と共に街に馴染んでいく設計としています。ガレージ部分は、コンクリートとガルバリウム鋼板張りの外壁を組み合わせた無機質な印象の仕上げとし、自然素材との対比が映えるファサードとなっています。

[内部の特徴]
 この住まいではキッチンと浴室を1階に設け、2世帯で共有しています。高齢者の世帯は水回りに近い1階を主な生活スペースとすることで日常生活の負担軽減に配慮し、若い世帯はガレージ上部の中2階と2階に生活スペースを設けることで、階により世帯を分離した設計としました。一方で、どちらの世帯からも眺められる中庭、リビングルームに設けた吹き抜けによって上下階が緩やかに繋がり、程よい距離感で世帯間の繋がりが生まれるようになっています。

 内装には地元・鳥取で育った杉材をふんだんに使用し、柱や梁はそのまま仕上げとして室内に表しました。家中が杉の良い香りに包まれ、柔らかくて暖かい杉の床は一年を通じて裸足で気持ちよく過ごすことが可能です。また、この住まいは『外張り断熱工法』による精度の高い断熱工事が施されています。床下空間を利用した暖房と、吹き抜けのオープンな空間の組み合わせによって室内の空気が循環し、寒い冬でも住まい全体が過ごしやすい温度に保たれています。

メインエントランス。コンクリート小叩きの壁により、道路からの視線をカットしている。

若い世帯の玄関。ガレージ脇の階段よりアプローチする。

LDKスペース。大きな窓から中庭を眺めることができる。

LDKに設けた吹き抜けにより、上下階が緩やかに繋がる。

和室。高齢者世帯の寝室と一体に利用できる。

中2階のファミリースペース。主に若い世帯のリビングとなる。

2階から中2階の方向を見る。高低差の少ない、スキップフロア特有の繋がりが生まれている。

吹き抜けの手摺は本棚を兼ねる。

吹き抜けよりLDKを見る。自然素材をふんだんに使用し、暖かい雰囲気が生まれている。

八頭町の家

[概要]
所在地 :八頭町
用途  :住宅
構造  :木造 2階建て
建築面積:105.80㎡
延床面積:165.90㎡(約50.3坪 ※面積には車庫部分も含む)

 郊外の新興住宅地に建築した、若い夫婦と子どもが暮らす住まいです。周囲には田園風景が残り、遠方には山々を望むことができる一方で、駅にもほど近く利便性の高い敷地での計画です。

[外部の特徴]
 シンメトリーな日本瓦葺きの屋根に、ベンガラ色に着色した杉板と白い漆喰のコンビネーションの外壁。印象的なカラーリングが田園の残る風景に映えます。玄関の横には柔らかいアーチ状の屋根がかかるガレージを設けました。アーチ状の屋根はそのまま母屋へ貫入して玄関庇と一体化し、伝統的なファサードに柔らかい印象を付加しています。

 ガレージの奥には日当たりの良い庭を設けました。庭に面した濡れ縁は内外を繋ぐ中間的なスぺースとなり、室内空間に広がりを与えています。

[内部の特徴]
 若い夫婦の住まいということもあり、家族の誕生や成長によって変化する暮らしに柔軟に対応できるプランを心がけました。リビングルームを囲うように配置したオープンな居室は明確な仕切りを持たず、住まい手の必要に応じて家具や建具を用いて仕切ることが可能です。リビングルーム上部の吹抜けによって各居室が緩やかに繋がり、程よい距離感で家族の気配を感じ取ることができます。

 内装には鳥取県産の智頭杉をふんだんに使用し、仕上げとして積極的に表しています。ダイナミックな架構(骨組み)がそのままインテリアとなり、智頭杉の持つ香りや暖かい雰囲気を直接感じ取ることができます。また、構造材を表して使うことで仕上げ材料を省略し、建物の高さを低く抑えて高いコストパフォーマンスを実現しています。

ガレージには印象的なアーチ屋根がかかる。

ガレージの天井面には、力強い骨組みが表れている。

濡縁。庇には、夏季の暑い日射を適切に遮蔽する効果を期待している。

広がりのあるリビングスペース。

和室は、障子を開け放すとリビングと一体化する。

籠り感のあるキッチンスペース。

リビングスペースの上部には、吹抜けを設けている。

吹抜けを介して、緩やかに空間が繋がっていく。

自然光や冬季の暖かい日射が、吹抜けを介して室内の奥に届けられる。

階段ホールと一体化したフリースペース。

各部屋は緩やかに繋がり、暮らしに合わせて区切ることができる。

室内には、智頭杉がふんだんに表れている。

岩坪の二世帯住宅

[概要]
所在地 :鳥取市
用途  :住宅
構造  :木造 2階建て
建築面積:192.08㎡
延床面積:266.02㎡(約80.6坪)

 山間部の自然豊かな地域に建つ木造住宅です。夫婦と子ども、その親世帯が共に暮らす二世帯住宅として計画しました。

[プランの特徴]
 切妻の屋根と下屋で構成される落ち着いた和風の外観とし、昔から続く集落に溶け込む設計を心がけました。外部の仕上げには日本瓦や杉板、漆喰塗りなどの伝統的な材料を用いており、年月と共に味わいが出て周囲の景観に馴染んでいきます。

 この住まいでは1階に親世帯、2階に子世帯の居室を計画し、生活ゾーンを階で分離しています。それぞれの生活ゾーンにリビングルームや寝室を配置することで、普段の生活は気兼ねなく送ることができる一方、浴室やキッチンなどの水回り設備は2世帯で共有しています。水回りは親世帯の寝室に近接させ、日々の生活の負担を軽減すると共に、高齢になっても自立した生活が送れるよう配慮しました。また、共有のダイニングスペースが二世帯の交流の場となり、食事の際には家族一同が顔を合わせます。比較的面積が大きな住宅ですが、それぞれの世帯は程よい距離感が保たれています。

公営住宅(戸建てタイプ)

[概要]
所在地 :鳥取市
用途  :公営住宅
構造  :木造 2階建て

[プランの特徴]
 鳥取市郊外に計画された、使いやすい間取りの公営住宅です。必要な部屋をコンパクトな2階建ての木造住宅にまとめ、異なる2タイプの住戸を少しずつずらしながら配置することで、各戸の自然採光やプライバシーを確保し
ています。田園の残る景観の向こうには、豊かな山々を望むことができます。

 外部は日本瓦や杉板などの伝統的な材料を中心に、周囲の景観に溶け込む和風な外観にまとめました。しっかりと軒先を出した設計は外観のためだけではなく、降雨や日射から外壁材を保護して将来の維持管理コストを低減すると共に、室内へ入る日射量を調整して空調負荷低減を図っています。

 内部の柱や梁、小屋組みには地元・鳥取で育った杉をふんだんに使い、そのままインテリアとして室内に積極的に表しています。構造材が仕上げを兼ねることで、仕上げ材料を省いて建物の高さを抑えることができ、公営住宅の限られた予算の中でも高いコストパフォーマンスを実現しています。保木本設計のコンセプトである『素的な住まいづくり』は、公営住宅の分野でも存分に活かされています。

囲 KAKOI

[概要]
所在地 :鳥取市
用途  :更衣室・シャワー室
構造  :木造 平屋建て
建築面積:156.70㎡
延床面積:131.68㎡

 鳥取市内の運動公園に建つ、シャワーブース付きの更衣室棟です。計画地には元々3本の大きな樹木がありました。この印象的な樹木を中庭のシンボルツリーとして活かし、建物で『囲うように』建築しました。

 ※この建物は、保木本設計と鳥取環境大学 船越美香さんの2者による共同設計です。

[プランの特徴]
 
シンボルツリーのある中庭を中心に据え、両脇に建物を配置したシンメトリーな外観が特徴です。勾配が緩やかなガルバリウム鋼板葺きの屋根に、『ドイツ下見板』と呼ばれる横張りの杉板のコンビネーションがシンプルで軽やかな印象を与えます。利用者は中庭を正面に見ながら、左右に分かれてそれぞれの更衣室へアプローチします。中庭はアプローチ動線も兼ねており、飛び石を渡れば各更衣室の中間に位置する審判室へと繋がります。

 中庭に面する外壁は大部分を乳白色のガラス張りとし、高所には連続窓を設けました。この開口部の計画によって、更衣室内に向けられる視線をカットしつつ明るい自然光と自然通風を取り込むことができます。また、シンボルツリーの木陰がガラスを通して室内に入り、室内にいても中庭の雰囲気を感じ取ることができます。従来の更衣室は暗くて閉鎖的なイメージがつきものですが、この建物では中庭を効果的に活用して開放性を作り、内外の適度な距離感を保っています。

 この建物では柱や梁、小屋組みに地元・鳥取で育った杉をふんだんに使い、建物内部にインテリアとしてそのまま表しました。木材は表して使うことで消臭効果や調湿効果が期待でき、仕上げ材料を省略して高いコストパフォーマンスを実現しています。建具やロッカーなどの造り付け家具にも杉材を多用しており、地元の材料、地元の職人の手で丁寧に作られています。

元々あった3本の樹木。

それを囲うように建築。

更衣室のアプローチ。

審判控室のアプローチは飛び石を渡る。

中庭側は乳白色ガラス張り。照明が無くても明るい。

換気用の高所窓付き。ロッカーも地元の杉を使って製作。

天井面には杉の垂木や野地板が表れている。

中庭の樹木。

中から外へ。閉塞性と開放性を併せ持つ。