大屋根の家

昔からある集落の中での建替え計画。

[概要]
所在地 :鳥取市
用途  :住宅
構造  :木造 2階建て
建築面積:125.83㎡
延床面積:187.96㎡(約57.0坪)

 古くからある集落で親子3世代が暮らす母屋を建て替えた計画です。旧家には良く手入れされた庭があり、それを活かすために母屋が建っていた位置を大きく変えずに建物を配置しました。

[外部の特徴]
 外観を印象付ける日本瓦葺きのアシンメトリーな大屋根は背後の山の稜線に良く馴染みます。外壁は白い左官壁(塗り壁)と杉板張りのコンビネーションに対して縦格子でアクセントをつけ、古くからある集落に調和する伝統的な意匠としました。

 また、元々あった立派な庭に面して大きな濡れ縁とバルコニーを設けて庭と居室を繋ぎ、日々の生活の中にも旧家の面影を感じられるよう配慮しました。

[内部の特徴]
 親世代との同居を考慮し、
LDKや水回りに合わせて高齢者の居室を1階に配置しました。生活機能を1階に集約することで日々の生活の負担を軽減し、ゆったりと幅を確保した廊下やトイレは車椅子の使用や介助にも対応しています。LDKに隣接する和室は玄関ホールから直接アプローチ可能な配置とすることで来客の動線に配慮し、戸を開放すればLDKの延長として一続きの大空間に変化します。

 2階に配置した夫婦と子どもの居室は、落ち着きが得られる個室の形態としました。各室には押入とロフト収納を備え、大家族に対応した十分な収納力があります。

 この住まいは鳥取県産の杉を使用した柱や梁をそのまま室内に表し、漆喰や珪藻土などの自然素材と組み合わせてシンプルかつ素朴な内装としました。床は肌触りの良い杉のフローリングを全面に張り、一年を通じて素足でも快適に過ごすことができます。

アシンメトリーの大屋根に、漆喰と杉板のコンビネーション。縦格子がアクセントとなる。

大きな濡縁とバルコニーにより、旧家の庭との繋がりが生まれる。

一体感のある明るいLDK。右側は濡れ縁に、左側は和室に繋がる。

キッチンの背面収納は建具により存在感を消すことができる。

キッチンからリビング側への眺め。調理しながら家族の姿を伺う。

2階へ上る動線をLDKに取り込み、家族の気配を感じることができる。

来客対応や、一時的な宿泊に対応した和室。玄関から直接アプローチできる。

襖を開放すると、和室とLDKが繋がり、一体的な空間に変化する。

ゆったりとした玄関。玄関脇には天井まである大容量の靴収納を造り付けた。

高齢者の同居に配慮し、廊下はゆったりと幅を確保した。

高齢者室。高窓より明るい自然光が入る。

将来の車椅子の使用や介助に配慮し、トイレもゆったりと設計。

2階の主寝室。小屋裏を活用したロフト収納を備える。

寝室にもたっぷりと明るい自然光が入る。

小屋裏を表しとし、勾配天井で解放感のある個室。

格子状の窓と高窓が印象的な階段ホール。

2階のトイレ。住まい全体の仕上げには漆喰などの自然素材を使用している。

はまさかの家(杉の香りの家)

[概要]
所在地 :鳥取市
用途  :住宅
構造  :木造+鉄筋コンクリート造 2階建て
建築面積:132.80㎡
延床面積:227.10㎡(約68.8坪 ※面積には車庫部分も含む。)

 郊外の住宅地に建築した、2世帯・7人の大家族が暮らす二世帯住宅です。敷地は2方向が道路に接する角地で、それぞれの道路には高低差があります。低い方の道路に面してガレージを設け、ガレージの上に中2階を乗せる『スキップフロア』の形態とすることで道路の高低差を処理した計画です。

[外部の特徴]
 前面道路は約4mの幅がありますが、背丈ほどのブロック塀が連なる街区にあり、見通しが悪い環境です。そのため、近隣への圧迫感の軽減と車の出入り時の安全性を考慮し、建物を自主的に道路境界線より控えて建てました。敷地が街の一部となり、セットバックにより生じた空地は来客の駐車スペースとして活用できるほか、近隣の車のすれ違いスペースとしても機能します。ガレージの奥には、プライベート性の高い中庭を設けています。

 外装の仕上げには、日本瓦や漆喰・杉板といった伝統的な自然素材を使用し、年月と共に街に馴染んでいく設計としています。ガレージ部分は、コンクリートとガルバリウム鋼板張りの外壁を組み合わせた無機質な印象の仕上げとし、自然素材との対比が映えるファサードとなっています。

[内部の特徴]
 この住まいではキッチンと浴室を1階に設け、2世帯で共有しています。高齢者の世帯は水回りに近い1階を主な生活スペースとすることで日常生活の負担軽減に配慮し、若い世帯はガレージ上部の中2階と2階に生活スペースを設けることで、階により世帯を分離した設計としました。一方で、どちらの世帯からも眺められる中庭、リビングルームに設けた吹き抜けによって上下階が緩やかに繋がり、程よい距離感で世帯間の繋がりが生まれるようになっています。

 内装には地元・鳥取で育った杉材をふんだんに使用し、柱や梁はそのまま仕上げとして室内に表しました。家中が杉の良い香りに包まれ、柔らかくて暖かい杉の床は一年を通じて裸足で気持ちよく過ごすことが可能です。また、この住まいは『外張り断熱工法』による精度の高い断熱工事が施されています。床下空間を利用した暖房と、吹き抜けのオープンな空間の組み合わせによって室内の空気が循環し、寒い冬でも住まい全体が過ごしやすい温度に保たれています。

メインエントランス。コンクリート小叩きの壁により、道路からの視線をカットしている。

若い世帯の玄関。ガレージ脇の階段よりアプローチする。

LDKスペース。大きな窓から中庭を眺めることができる。

LDKに設けた吹き抜けにより、上下階が緩やかに繋がる。

和室。高齢者世帯の寝室と一体に利用できる。

中2階のファミリースペース。主に若い世帯のリビングとなる。

2階から中2階の方向を見る。高低差の少ない、スキップフロア特有の繋がりが生まれている。

吹き抜けの手摺は本棚を兼ねる。

吹き抜けよりLDKを見る。自然素材をふんだんに使用し、暖かい雰囲気が生まれている。

岩坪の二世帯住宅

[概要]
所在地 :鳥取市
用途  :住宅
構造  :木造 2階建て
建築面積:192.08㎡
延床面積:266.02㎡(約80.6坪)

 山間部の自然豊かな地域に建つ木造住宅です。夫婦と子ども、その親世帯が共に暮らす二世帯住宅として計画しました。

[プランの特徴]
 切妻の屋根と下屋で構成される落ち着いた和風の外観とし、昔から続く集落に溶け込む設計を心がけました。外部の仕上げには日本瓦や杉板、漆喰塗りなどの伝統的な材料を用いており、年月と共に味わいが出て周囲の景観に馴染んでいきます。

 この住まいでは1階に親世帯、2階に子世帯の居室を計画し、生活ゾーンを階で分離しています。それぞれの生活ゾーンにリビングルームや寝室を配置することで、普段の生活は気兼ねなく送ることができる一方、浴室やキッチンなどの水回り設備は2世帯で共有しています。水回りは親世帯の寝室に近接させ、日々の生活の負担を軽減すると共に、高齢になっても自立した生活が送れるよう配慮しました。また、共有のダイニングスペースが二世帯の交流の場となり、食事の際には家族一同が顔を合わせます。比較的面積が大きな住宅ですが、それぞれの世帯は程よい距離感が保たれています。