はまさかの家(杉の香りの家)

[概要]
所在地 :鳥取市
用途  :住宅
構造  :木造+鉄筋コンクリート造 2階建て
建築面積:132.80㎡
延床面積:227.10㎡(約68.8坪 ※面積には車庫部分も含む。)

 郊外の住宅地に建築した、2世帯・7人の大家族が暮らす二世帯住宅です。敷地は2方向が道路に接する角地で、それぞれの道路には高低差があります。低い方の道路に面してガレージを設け、ガレージの上に中2階を乗せる『スキップフロア』の形態とすることで道路の高低差を処理した計画です。

[外部の特徴]
 前面道路は約4mの幅がありますが、背丈ほどのブロック塀が連なる街区にあり、見通しが悪い環境です。そのため、近隣への圧迫感の軽減と車の出入り時の安全性を考慮し、建物を自主的に道路境界線より控えて建てました。敷地が街の一部となり、セットバックにより生じた空地は来客の駐車スペースとして活用できるほか、近隣の車のすれ違いスペースとしても機能します。ガレージの奥には、プライベート性の高い中庭を設けています。

 外装の仕上げには、日本瓦や漆喰・杉板といった伝統的な自然素材を使用し、年月と共に街に馴染んでいく設計としています。ガレージ部分は、コンクリートとガルバリウム鋼板張りの外壁を組み合わせた無機質な印象の仕上げとし、自然素材との対比が映えるファサードとなっています。

[内部の特徴]
 この住まいではキッチンと浴室を1階に設け、2世帯で共有しています。高齢者の世帯は水回りに近い1階を主な生活スペースとすることで日常生活の負担軽減に配慮し、若い世帯はガレージ上部の中2階と2階に生活スペースを設けることで、階により世帯を分離した設計としました。一方で、どちらの世帯からも眺められる中庭、リビングルームに設けた吹き抜けによって上下階が緩やかに繋がり、程よい距離感で世帯間の繋がりが生まれるようになっています。

 内装には地元・鳥取で育った杉材をふんだんに使用し、柱や梁はそのまま仕上げとして室内に表しました。家中が杉の良い香りに包まれ、柔らかくて暖かい杉の床は一年を通じて裸足で気持ちよく過ごすことが可能です。また、この住まいは『外張り断熱工法』による精度の高い断熱工事が施されています。床下空間を利用した暖房と、吹き抜けのオープンな空間の組み合わせによって室内の空気が循環し、寒い冬でも住まい全体が過ごしやすい温度に保たれています。

メインエントランス。コンクリート小叩きの壁により、道路からの視線をカットしている。

若い世帯の玄関。ガレージ脇の階段よりアプローチする。

LDKスペース。大きな窓から中庭を眺めることができる。

LDKに設けた吹き抜けにより、上下階が緩やかに繋がる。

和室。高齢者世帯の寝室と一体に利用できる。

中2階のファミリースペース。主に若い世帯のリビングとなる。

2階から中2階の方向を見る。高低差の少ない、スキップフロア特有の繋がりが生まれている。

吹き抜けの手摺は本棚を兼ねる。

吹き抜けよりLDKを見る。自然素材をふんだんに使用し、暖かい雰囲気が生まれている。