1.住まいの設計は共同作業
①住まいを構成する要素
私たちの仕事は建築主(住まい手の皆様)から依頼を受けて始まります。建築は様々な要素が集約されて出来上がります。
- 地球の環境
- 地域の人々や街並み
- 法律、条例
- 材料と、その生産者
- 職人の技術
- 住まい手の想いや暮らし・・・
全ての要素をバランスよく考慮しながら、専門的な知識・技術や美的感覚を持って建物としてまとめ上げるのが私たち建築士の仕事です。
②設計はコミュニケーション
建築設計の仕事、特に住まいの設計は、住まい手と設計者の共同作業でなければ成り立ちません。私たち設計者や、あるいは住まい手の想いだけが先走ってしまうと『まとまり』を欠くことになり、決して良い仕事はできません。
お互いに目指すものを共有しながら何度もコミュニケーションを繰り返した結果、その住まいだけが持つ魅力と住まいへの愛着が生まれるのだと思います。
2.作品づくりではなく、住まいづくり
①設計事務所のイメージ?
皆様は、設計事務所(建築家)について、どのような印象をお持ちでしょうか?
- デザインを押し付けられる?
- 高価な材料を使う?
- 実用性より見た目を優先?
- 素人から意見を言いにくい?・・・
設計事務所での住まいづくりは『敷居が高い』と感じられる方が多いようです。マスメディアなどを中心に、建築家の作品性を前面に押し出した発信をしています。その影響もあって『建築家=創作活動、作品づくり』といった印象を持たれている方が多いのではないでしょうか。
②住まい手の暮らしを第一に考える
建物には見た目の美しさなど、『作品性』の要素が含まれることも事実です。しかし実際の住まいに求められているのは住まい手の暮らしにフィットする設計であり、私たちも目指しているところは同じです。設計事務所だからといって、実用性を無視して作品づくりに没頭することはありません。
私たちを含む多くの建築士は『住まい手の生活をより豊かにするためには、どうすれば良いか』を第一に考えています。私たちはお客様の生活に寄り添うだけでなく、将来のことまで心配する大変なお節介焼きなのです。
私たちの仕事のスタンスは、『作品づくり』ではなく『住まいづくりのお手伝い』であるということを知っていただきたいと思います。
3.設計・監理の独立性
①『設計』と『監理』の違い?
私たち建築士の仕事は主に『設計』と『監理』で構成されます。それらを合わせて『設計監理』などと呼ばれています。
●設計の仕事
- 条件を整理して建物の骨格を決める『基本設計』
- 詳細な設計図を作る『実施設計』
- コストを計算して精査する『積算』
- 住まい手の代理人として建築に関わる法規制の申請を行う etc.
●監理の仕事
- 工事が設計図通りに進んでいるか現場でチェックする
- 設計意図や注意点を施工者へ伝達する
- 住まい手の代理人として工事中の専門的な打合せや調整を行う
- 工事中の変更で予算オーバーしないようにコストを管理する etc.
『設計』は主に机上の仕事、『監理』は工事中の仕事だとご理解ください。意図した通りに建物が作られなければ設計の意味がありませんから、設計と監理は本来一体的に行われるべきものだと言えます。
②『設計・監理』と『設計・施工』の違い?
私たち設計事務所にご依頼をいただいた場合、設計事務所が『設計・監理』を担当し、『施工(工事)』は地域の工務店等に別途依頼することになります。
一方、大手住宅メーカーや工務店の場合、設計から工事までを同じ会社の中で一貫して行う『設計・施工』の体制となっています。工事まで一貫して行うと、『監理』の手間が省けて効率がよさそうに思えますね?
その違いについて、下の図をご覧ください。

上の図からもお分かりいただける通り、設計事務所での住まいづくりの特徴は、設計・監理の独立性が確保されることです。建築士が住まい手の味方となることは、住まいづくりをされる皆様にとって大きなメリットだと言えます。
品質の高い住まいづくりをするためには、設計・監理者と施工者が対等な立場で協力することが必要です。そのために設計・監理の独立性が重要になるのです。
保木本設計では、住まい手の皆様より直接依頼を受け、独立した設計・監理者として住まい手の立場に立った誠実な住まいづくりをポリシーとしています。
4.設計費は『価値と責任』
①どこに頼んでも設計費はかかる
- 設計事務所は設計費を取るから、高くつくのでは?
- ハウスメーカーや工務店に頼んだら、設計費がかからないのでは?
お客様より、このような質問をいただくことがあります。確かに、私たちの設計費は決して安くないご負担だと思います。世の中には、『設計無料サービス』を謳う会社が存在することも事実です。
しかし、結論から申し上げますと、どこに頼んでも設計費は必ずかかります。
ここで、設計のプロセスについて考えてみましょう。皆様に設計図や提案図が渡るまでの流れは、大雑把に(本当に、物凄く大雑把です)説明すると以下のようになります。
- 住まい手の要望をよく聞いて、整理する
- 敷地や法律、材料をよく調べる
- お客様の要望に合う住まいを考える
- 図面や資料を作って提案する
このプロセスは、設計事務所やハウスメーカーを問わず必要になります。作業の効率化はできても、プロセスを省略することはできません。省略することは、すなわち皆様の住まいづくりにおいて手抜きをしているということです。
したがって、どこに頼んでも、設計にはそれなりの手間と時間(=費用)がかかっています。設計費が必要な理由が、お分かりいただけたでしょうか?
②設計費の代わりに得られるもの
私たちが頂戴する設計費は、間取りや図面を作るための『単なる手間賃』ではありません。設計費を頂戴する代わりに、提示された予算の中で専門的な知識とアイデアを活用して価値を創出することが私たちの仕事です。
- アイデアを出して、住まい手の希望を形にする
- 設計に責任を持つ
- 保木本設計だけの価値を加える
これは、最初のプラン提案も例外ではありません。保木本設計では、設計プラン作成にも予め設計費の一部となる費用を頂戴しています。それにより、入念に調査・検討を行った上で責任を持った提案が可能となります。
住まい手のために入念に検討したプラン、前述の設計・監理によるメリット、そして完成した住まいで過ごす豊かな時間を考えれば、私たちは設計費を頂戴する代わりに、お客様へ大きな価値をお返しできると考えています。
住まい手の皆様も、設計費の持つ意味について今一度考えていただけると幸いです。