
鉄骨造により2階を大胆にオーバーハング。柱や壁のない、2台分の並列駐車スペースを確保。
[概要]
所在地 :鳥取市(準防火地域内)
用途 :住宅
構造 :鉄骨造 3階建て(準耐火建築物)
建築面積:92.25㎡
延床面積:219.78㎡(約66.6坪 ※面積には車庫部分も含む)
古くから町屋が建ち並ぶ街道沿いで、5人家族のための住まいを建て替えました。計画地は、5m未満の狭い間口に対して30m近い奥行きがあり、両隣の家屋は外壁同士が接するほどに迫っています。狭い間口の両側が道路に接する、『うなぎの寝床』とも表現できる細長い敷地です。
この住まいでは、5台分の駐車スペースを設けつつ、良好な住環境を実現することを要望されました。敷地・要望ともに一見すると厳しい条件を、構造設計と動線の工夫により解決した住まいです。
[外部の特徴]
一般的な木造在来工法の場合、2階を支えるためには1階に柱や壁が必要です。しかし、この敷地は間口が極端に狭いため、柱や壁を作ると駐車スペースは縦列とせざるを得ません。5台分もの縦列駐車は普段の出入りに不便であるほか、駐車スペース自体の面積も大きくなってしまいます。一方、柱や壁をなくして5m未満の間口を最大限に使うことができれば、やや狭いながらも小型乗用車2台を並列に駐車することが可能です。
これらの条件を総合的に検討した結果、この住まいでは鉄骨造を採用しました。鉄骨造の長所を活かし、2階を大胆にオーバーハングする(1階より跳ね出させる)ことで、地上には柱や壁がない駐車スペースが生まれました。敷地の間口をいっぱいに使うことによって、最小限のスペースで5台分の駐車スペースを確保し、上階には大きな居住空間を作りました。
[内部の特徴]
細長い敷地の特徴を活かすため、1階は玄関ホールから勝手口まで一直線に続く『通り土間』を計画しました。通り抜け動線によって両側の駐車スペースへアプローチできるだけでなく、収納を兼ねたユーティリティースペースとしても機能します。通り土間の床には色違いのタイルを張り分け、庭園の飛び石を想起させるデザインとしています。
LDKや寝室など、主要な居室は2階と3階に配置しています。それぞれの居室は両側の道路から自然採光を取り込む計画とし、見通しの良い一直線の廊下で接続することで敷地の奥行きを生かしています。また、各居室に設けたバルコニーは道路側から室内へ向けられる視線をカットし、街道沿いの立地にあってもプライバシーを侵されることなく、自由に窓を開けることができます。バルコニーに出れば、鳥取の夏の風物詩である花火大会を鑑賞することも可能です。

設計時に作成した模型。細長い敷地がお分かりいただけるでしょうか。

2階を大きく跳ね出し、その下を駐車場としている。模型でしか確認できない横からのアングル。

正面玄関。その脇には和室から覗くことができる坪庭を設けた。

玄関から反対側の道路まで続く通り土間。床タイルは色分けにより『飛び石』風に。

勝手口より正面玄関を見る。通り土間は大容量の収納を兼ねている。

反対の道路側にも並列の駐車スペースを確保。ガレージと合わせて、5台分の駐車が可能。

シャッター付きガレージ。奥のドアは通り土間へと繋がる。

玄関脇の和室。来客の一時的な宿泊や、ご近所さんとの交流にも使用できる。

建替え前の住宅から移設した味のある欄間。建替えでは、思い出の品を残すことも可能。

2階のリビングスペース。駐車スペースのオーバーハングにより、広々とした空間を創出できた。

リビングの奥には、こじんまりとした畳スペース。

壁際には収納棚を造り付けた。ベンチとしても活用できる。

キッチンスペースには、シンプルなシステムキッチンを設置。

食器棚は造作により作り付けた。

廊下は端から端まで一直線に視線が抜け、敷地の奥行きを感じられる。

廊下にも収納を造り付けた。収納は椅子の高さに合わせてあり、ベンチとしても使用できる。

階段は最上階から光が落ち、明るさが確保されている。

3階の居室からは、夏の花火大会を鑑賞することができる。

鉄骨造であっても、内装はできる限り木質化している。良い香りと共に調湿効果も得られる。